『漆器』
日本を代表する工芸品。独特のつやと質感、口に当てた時の当たりのやわらかさなど、陶器や磁器とはちがった魅力のあるうつわです。木地や下地、塗りの技法によって製品にはさまざまなものがあります。特に良質な漆器は手入れをしながら長く使えるので大切にしたいものです。
『漆とは』
ウルシ化ウルシノキの樹液が漆の原料になります。樹液に含まれるウルシオールという物質が、酸化酵素の働きで皮膜になります。漆が固まるには水分が必要になってきます。水が蒸発するときに生まれる酸素が漆を固くするためです。なので乾燥した地域、寒い場所では漆が乾きにくいということになります。高温多湿の日本は漆器つくり、漆塗りにもってこいの環境となります。
漆はいちど乾くと酸やアルカリ、塩分やアルコールにも強いという特性もあります。また漆の樹液に含まれるウルシオールという物質には抗菌効果があり、漆器に入れた食品は大腸菌類が激減することがわかっています。
『漆器をみるポイント』
合成樹脂や圧縮木材に漆を塗った漆器も増えてきました。こうしたものも漆器には違いありませんが強度はあまりなく、色の深みもあまりありません。こうした漆器はうつわの厚みが均一に近いという特徴があります。本来の漆器は椀の中心ほど厚みが増しています。漆器を選ぶ時のポイントのひとつになります。
内側の塗り・・・内側は上塗りで仕上げてあるものが多いですが、簡単な加飾をほどこしてある場合もあります。また外側は木目を生かした摺漆(木地に生漆を摺るように薄く塗り、木目の美しさを生かす漆塗りの技法のひとつ)で、内側だけは朱塗りになっているようなものもあります。
表面の塗り・・・汁やご飯が盛られる内側よりも、表面のほうが加飾されることが多いです。とはいえ、一切の加飾をせず、漆の美しさを存分に見せてくれる漆器もひときわ上品な印象を受けます。
高台・・・うつわの底、輪になっている高台にいたるまで丁寧に手塗りされたものは良い漆器といえます。隅々まで塗り、磨きを施された漆器はとても美しいです。
塗りの種類・・・大きく分けて二つあります。研磨後に摺漆を行う「ろいろ仕上げ法」と、刷毛で塗って仕上げる「塗り立て法」です。
加飾技法・・・上塗りだけではなくさらに加飾(絵や装飾を施す)をした漆器も多いです。加飾の技法には、代表的なものが、漆で絵を描いた上に金銀の粉を蒔く「蒔絵」や、漆器面を掘ってその溝の部分に金箔を貼り付ける「沈金」、夜行貝、あわび貝などを薄い板状にしたものを使って文様をつくる「螺鈿」などがあります。
『漆器のお手入れ方法』
軽い汚れであるなら人肌程度のぬるま湯でながす程度でOKです。油汚れは薄めた中性洗剤をつけた布巾かやわらかいスポンジで優しく洗います。洗ったらすぐに布巾で拭いて水気を取れば水跡も残りません。陶器や金物との混ぜ洗いや、食器洗い乾燥機の使用は絶対に避ける。